法人不動産売却の税金完全ガイド:手残りを最大化する節税戦略
「会社名義の不動産を売りたいけれど、税金でどれくらい持っていかれるのか?」
「個人で売る場合と比べて、結局どちらが得なのだろうか?」
法人による不動産売却は、個人の場合と計算の仕組みが根本から異なります。特に法人税は他の事業利益と合算されるため、タイミングや対策次第で「手残り額」に数百万、数千万円の差がつくことも珍しくありません。
この記事では、法人不動産売却にかかる税金の基礎から、個人との比較、そして収益を最大化するための具体的な節税手法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. 法人が不動産を売却した際にかかる税金の内訳
法人が土地や建物を売却して利益(譲渡益)が出た場合、それは「益金」としてカウントされ、会社の他の所得と合算して課税されます。
主な税目と実効税率
法人の所得に対して課されるのは、主に以下の税金です。
法人税(国税)
地方法人税(国税)
法人住民税(地方税)
法人事業税(地方税)
これらを合算したものを**「実効税率」と呼びます。会社の資本金や利益規模によって変動しますが、一般的には約30%〜34%**程度と考えておけば間違いありません。
消費税の扱いに要注意
法人の場合、個人のマイホーム売却とは異なり、「建物」の譲渡には消費税が課税されます(土地は非課税)。売却価格が数億円規模になると消費税額も多額になるため、税込・税抜の処理を正確に行う必要があります。
2. 譲渡所得(売却益)の計算方法とシミュレーション
税金がかかるのは「売却価格そのもの」ではなく、売却によって得られた「利益」に対してです。
計算式
譲渡価額:不動産の売却価格
取得費:購入代金や仲介手数料の合計から、所有期間中の「減価償却費」を差し引いた帳簿価額(簿価)
譲渡費用:売却のために直接支払った仲介手数料、印紙税、測量費、解体費用など
シミュレーション例
売却価格:1億円
帳簿価額(簿価):6,000万円
譲渡費用:500万円
譲渡所得 = 3,500万円
この3,500万円に対し、約30%〜34%の税率(約1,050万〜1,190万円)が課されるイメージです。
3. 【徹底比較】個人 vs 法人 どっちが得か?
不動産売却において、個人と法人のどちらが有利かは「所有期間」と「他の所得状況」によります。
| 比較項目 | 法人 | 個人(長期譲渡) | 個人(短期譲渡) |
| 所有期間の区別 | なし(一定) | 5年超 | 5年以下 |
| 税率 | 約30%〜34% | 約20% | 約39% |
| 損益通算 | 事業所得と合算可 | 他の所得と合算不可 | 他の所得と合算不可 |
| 赤字の繰越 | 10年間可能 | 原則不可 | 原則不可 |
【法人が有利なケース】
所有期間が5年以内の短期売却(個人の39%に対し、法人は約33%)
本業が赤字、または過去の繰越欠損金がある場合
売却益を役員退職金などの経費で相殺できる場合
4. 収益を最大化する!プロが実践する5つの節税対策
法人の不動産売却で手残りを増やすには、売却益をいかに経費や特例で圧縮するかが鍵となります。
① 繰越欠損金との相殺
法人は過去10年間に発生した赤字(繰越欠損金)を、今回の売却益と相殺できます。赤字が溜まっているタイミングでの売却は、実質的に無税にできる大きなチャンスです。
② 役員退職金の活用
社長の退職時期に合わせて不動産を売却し、売却益を退職金の支払いに充てる方法です。退職金は経費(損金)として認められるため、法人税を大幅に抑えつつ、会社から個人へ効率よく資産を移転できます。
③ 特定の資産の買換え特例(圧縮記帳)
売却した代金で新たに事業用不動産を取得する場合、一定の条件を満たせば「圧縮記帳」が利用できます。これは売却益への課税を将来に先送り(繰延)できる制度で、目先のキャッシュフローを確保するのに極めて有効です。
④ 大規模修繕や含み損資産の整理
売却を決めた期に、保有している他の建物の修繕を行ったり、価値が下がった有価証券などを売却して損失を出したりすることで、全体の利益を圧縮します。
⑤ 専属専任媒介と仲介手数料の交渉
税金ではありませんが、手残りを増やすには支出を抑えることも重要です。信頼できる仲介会社を選定し、適切な売却活動を行うことで、相場より高く売る努力が最も効果的な「対策」となります。
5. まとめ:戦略的な売却が会社を守る
法人の不動産売却は、単なる資産の現金化ではなく、法人の財務体質を強化するための重要な「出口戦略」です。
個人のように所有期間を待つ必要がない反面、本業の決算状況や消費税の計算など、専門的な視点が欠かせません。まずは自社の保有不動産の「簿価」を確認し、今期の着地予想を立てることから始めましょう。
最適なタイミングで売却を実行すれば、納税後の手残り資金を次の事業投資や内部留保へ有効に活用できるはずです。