建物の取得費はどう計算する?「減価償却」の仕組みをわかりやすく解説【不動産売却の税金対策】

 


不動産を売却したとき、手元に残るお金を左右する最も重要な要素は「税金」です。

そして、その税金計算の土台となるのが「取得費(不動産を買ったときの価格)」なのですが、建物の場合は「買ったときの金額」をそのまま使うことができません。

ここで登場するのが**「減価償却(げんかしょうきゃく)」**という考え方です。

「言葉は聞いたことがあるけれど、計算方法なんてさっぱり……」という方も多いはず。しかし、この仕組みを理解していないと、思いもよらない多額の譲渡所得税を支払うことになりかねません。

この記事では、不動産売却における建物の取得費計算と、減価償却の仕組みについて、どこよりも分かりやすく丁寧に解説します。


1. なぜ「買ったときの価格」で計算できないの?

土地と建物には、税務上の大きな違いがあります。

  • 土地: 月日が流れても価値が減らない(非償却資産)

  • 建物: 月日が経つごとに古くなり、価値が減っていく(償却資産)

不動産を売却した際の利益(譲渡所得)を計算するとき、建物については「買ったときの価格」から「今までの使用で減った価値」を差し引かなければなりません。この「減った価値の累計」を減価償却費と呼びます。

建物の取得費 = 建物購入代金 + 購入諸経費 - 減価償却費の合計

つまり、長く住めば住むほど「建物の取得費」は帳簿上どんどん小さくなっていきます。取得費が小さくなるということは、計算上の「売却益(利益)」が大きくなるため、結果として税金が高くなりやすいという仕組みなのです。


2. 減価償却費の具体的な計算方法(定額法)

個人がマイホームなどの不動産を売却する場合、計算には「定額法」を用います。計算式は以下の通りです。

減価償却費 = 建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

※「0.9」をかけるのは、建物の残存価値を考慮した旧定額法のルールです。

構造によって異なる「償却率」

建物の丈夫さ(構造)によって、価値がなくなるまでの期間(耐用年数)が決められており、それに応じて「償却率」が変わります。

建物の構造耐用年数(マイホーム用)償却率
木造・合成樹脂造33年0.031
マンション(RC造)70年0.015
重量鉄骨造51年0.020

※マイホーム(居住用)の場合、事業用よりも耐用年数が1.5倍長く設定されているため、1年あたりの減価償却費は少なくて済みます。


3. 【実践】シミュレーションで計算してみよう!

例えば、以下の条件で15年住んだ一戸建て(木造)の取得費を計算してみましょう。

  • 建物購入価格:3,000万円

  • 構造:木造(償却率 0.031)

  • 居住期間:15年

① 1年あたりの減価償却費

3,000万円 × 0.9 × 0.031 = 83.7万円

② 15年分の減価償却費の合計

83.7万円 × 15年 = 1,255.5万円

③ 現在の建物の取得費

3,000万円 - 1,255.5万円 = 1,744.5万円

もし、この家を土地と合わせて高く売却できた場合、土地の取得費に加えて、この「1,744.5万円」を差し引いて利益を計算することになります。


4. 取得費を計算するときの「3つの注意点」

① 購入時の「土地」と「建物」の内訳を確認する

売買契約書では、土地と建物が合算されていることが多いです。しかし、減価償却は「建物」にしか適用されません。消費税額から逆算したり、固定資産税評価額の比率で分けたりして、建物分がいくらなのかを明確にする必要があります。

② リフォーム費用も「取得費」に加算できる

過去に行った大規模なリフォームや増改築の費用は、建物の取得費に加えることができます。これも減価償却の対象となりますが、取得費を底上げしてくれるため、節税に繋がります。当時の領収書は大切に保管しておきましょう。

③ 「5%ルール(概算取得費)」の罠

当時の契約書を失くしてしまい、どうしても購入価格が分からない場合、売却価格の「5%」を取得費として計算します。

しかし、これを使うと「利益」が非常に大きく算出されてしまい、税金が跳ね上がるケースがほとんどです。減価償却を考慮しても、実際の購入価格を使った方がお得なケースが多いため、まずは当時の資料を徹底的に探すことが先決です。


5. まとめ:正しい計算が「手残り」を増やす

建物の取得費計算(減価償却)は、一見すると節税の敵のように見えますが、ルールを正しく理解し、リフォーム費用や諸経費を漏れなく計上することで、不必要な納税を避けることができます。

  1. 建物の構造を確認し、正しい償却率を使う

  2. 土地と建物の価格を正確に分ける

  3. 売却益が出そうな時は「3,000万円特別控除」などの特例を併用する

不動産売却は、こうした細かい計算の積み重ねで最終的な「手残り」が決まります。

「自分の場合はいくらになるんだろう?」と不安な方は、一度お手元の契約書を見ながら計算にチャレンジしてみてくださいね。



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