【相続した実家の売却】取得費不明でも大丈夫?税金対策と3000万円控除の注意点
「親から相続した実家を売却したいけれど、いくらで買ったか分かる書類が見当たらない……」
「古い家だから、売却価格のほとんどに税金がかかってしまうのでは?」
このような悩みを持つ方は少なくありません。特に相続した物件の場合、当時の売買契約書を紛失しているケースが多く、そのまま申告すると税負担が非常に重くなってしまうリスクがあります。
しかし、あきらめるのはまだ早いです。取得費が不明な場合の対処法や、空き家対策としての「3,000万円特別控除」を正しく活用すれば、手元に残る現金を大きく増やすことができます。
この記事では、相続不動産の売却における税金の仕組みと、取得費不明をカバーする具体的な節税対策を分かりやすく解説します。
1. 「取得費不明」がなぜピンチなのか?
不動産を売却したときの税金(譲渡所得税)は、以下の計算式で決まります。
ここで最も重要なのが「取得費」です。これは「その物件をいくらで買ったか」という費用ですが、証明書類がない場合は原則として**「売却価格の5%(概算取得費)」**として計算しなければなりません。
(例)実家が3,000万円で売れた場合
取得費が不明だと、3,000万円 × 5% = 150万円しか経費として認められません。
残りの2,850万円が利益とみなされ、そこに約20%〜39%もの税金がかかってしまいます。
もし、本来の購入価格がもっと高かったのであれば、払わなくていいはずの税金を数百万円単位で余計に支払うことになりかねません。
2. 契約書がなくても諦めない!取得費を証明する代替手段
売買契約書がなくても、過去の記録から取得費を推定して認められるケースがあります。以下の資料が残っていないか、実家の押し入れや金庫を隅々まで確認してみましょう。
住宅ローンの金銭消費貸借契約書: 借り入れ金額から購入価格を推測できる場合があります。
通帳の引き出し履歴: 購入当時のまとまった出金の記録。
当時のパンフレットや価格表: 同じマンションや分譲地の販売資料。
固定資産税の精算書: 購入時に売主とやり取りした書類。
相続税の申告書類: 当時の評価額が記載されていることがあります。
これらの証拠を積み上げることで、税務署に実態に近い取得費を認めてもらえる可能性があります。
3. 相続空き家の「3,000万円特別控除」をフル活用する
取得費が分からない場合でも、税負担を劇的に減らせる最強の武器が**「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家特例)」**です。
これは、亡くなった方の自宅を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度です。
特例を受けるための主な要件
昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた一戸建てであること(旧耐震基準)。
亡くなった方が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所などの例外あり)。
相続から売却まで、ずっと空き家(貸し付けや居住をしていない)であること。
耐震リフォームをして売る、または更地にして売ること。
売却代金が1億円以下であること。
相続日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
この特例が適用されれば、取得費が不明で計算上の利益が大きく出てしまっても、3,000万円までは非課税になります。
4. 2026年以降の売却に向けた「空き家特例」の注意点
空き家特例は近年、使いやすく改正されていますが、同時に新たな制限も加わっています。
相続人が多いと控除額が減る?
2024年以降の売却から、相続人が3人以上の場合は一人当たりの控除額が最大2,000万円に制限されるようになりました。兄弟姉妹で共有相続する場合は、誰がいくら控除を受けられるか事前にシミュレーションが必要です。
「売却後」の工事でもOKに
以前は売る前に解体やリフォームを済ませる必要がありましたが、現在は**「売却した翌年の2月15日まで」**に買主が工事を完了させれば適用が認められるようになり、活用の幅が広がりました。
5. 相続税を払った人は「取得費加算の特例」もチェック
相続税をすでに納めている場合、その相続税の一部を取得費に上乗せして利益を減らせる「相続税の取得費加算の特例」があります。
ただし、「空き家特例」との併用はできません。 どちらの特例を使ったほうが手残りが多くなるのか、慎重な比較が不可欠です。
まとめ:実家の売却は「期限」と「書類」が命
相続した実家の売却は、時間の経過とともに「3年」という特例の期限が迫ってきます。取得費が分からないからといって放置せず、まずは家の中に眠っている古い書類を探すことから始めてください。
書類が見つかれば: 本来の取得費で正しく申告。
書類がなくても: 「空き家特例」などの特別控除を適用して節税。
この2段構えで対策を立てることで、大切な実家を負の遺産にせず、最大限の資産として活用することができます。
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